アルパカ牧場での七日間 —— Evansburg 冬の日記
Evansburg に到着した日、世界は一面の銀世界だった。駅を出ると、足元の雪がきしむ音が微かに響き、遠くには針葉樹の森が静かに佇んでいる。この旅では WWOOF(世界有機農業ボランティア組織)を通じて、ある牧場と連絡を取り、一週間滞在しながら牧場の日常を体験することになっていた。

アルパカと過ごす日々
アルパカは想像以上に大きく、成長した個体は立ち上がるとほぼ私と同じくらいの高さがある。大きく丸い目をしていて、どこか無邪気で賢そうな表情をしている。おとなしい見た目とは裏腹に、餌やりの時間になると彼らは一変し、まるで食べ物を奪い合うかのように押し寄せてくる。一番恐れていたのは、彼らの「唾攻撃」だった。アルパカの唾には消化液が含まれていて、強烈な臭いを放つ。しかし幸運なことに、一週間の間で彼らに唾をかけられることはなかった。

私の主な仕事は、畜舎の掃除、干し草と飼料の補充、そして水飲み場が凍らないように管理することだった。マイナス20度の寒さの中では、こうした単純な作業ですら非常に過酷になる。干し草を運ぶたびに、鼻の奥まで干し草と動物の匂いが染み込み、指先は凍えるほど冷たくなった。それでも、アルパカたちが美味しそうに餌を食べる姿を見ると、充実感を感じた。畜舎を掃除していると、彼らは小屋の後ろからそっと顔を覗かせ、まるで監督でもしているかのようだった。この小さなやり取りが、単調な作業を楽しいものにしてくれた。

アルパカについてもいくつか学んだ。彼らは群れで行動する動物で、おとなしい性格ながらも、時折食べ物を巡って争うことがある。牧場主によると、アルパカは体をぶつけたり、耳を噛んだりして優位性を示すという。しばらく観察していると、彼らの社会構造が見えてきた。どうやら、群れの中には人気者がいて、いつも周りに「取り巻き」がいるようだった。

牧場の自然と景色
一日の仕事は午前と午後の二部制で、それぞれ三時間ずつ。その合間の自由時間には、カメラを片手に牧場内を探索した。ここは典型的な内陸性気候の高緯度針葉樹林地帯で、時折見たことのない野鳥に出会うことがあった。ある日、牧場の端で雪の上を跳ねる小さな鳥を見つけ、シャッターを切った。彼らの姿は一瞬のうちに消えてしまったが、その瞬間を写真に収めることができた。

牧場には野生の鹿も現れる。彼らは非常に警戒心が強く、常に周囲を注意深く見回し、何かあればすぐに逃げ出す準備をしている。ある時、私は家の中に隠れ、窓越しに望遠レンズで一頭の赤い短角鹿を捉えた。雪原の中に佇み、遠くを見つめるその姿は、静かでありながら力強さを感じさせた。この写真は、今回の旅の中でも特に印象的な一枚になった。

鹿だけでなく、雪ウサギにも遭遇した。彼の毛色は雪と完全に同化していて、目の輝きがなければ気づかなかったかもしれない。しゃがんで観察しようとした瞬間、彼は私の気配を察知し、一瞬で森の奥へと消えていった。
ドイツ系カナダ人の牧場主との日常
牧場の主人はドイツ系カナダ人で、率直な性格と独特なユーモアを持っていた。彼の言葉は簡潔で直接的だが、時にそれが面白さを生み出していた。彼の生活は非常に質素で、朝食は毎日、ミルクで煮たオートミールにバナナのスライスを加えたもの。昼食と夕食はシンプルなトーストにチーズとハムを挟んだものに、温かい野菜スープを添える程度だった。

食事のバリエーションは少ないが、寒い気候の中で飲む温かいスープは何にも代えがたい安心感を与えてくれた。ある晩、彼は自家製の黒ビールを振る舞ってくれた。苦味があるが、麦芽の香ばしさが際立ち、氷点下の気温の中で体を芯から温めてくれた。

彼の暮らしぶりを観察していると、家具はすべて木製で、使い込まれたものばかりだったが、丁寧に手入れされていた。朝は必ずアルパカの様子を見てから、暖炉の前でコーヒーを飲み、窓の外の雪景色を眺める。このゆったりとした時間の流れに、私は都会の忙しさを忘れ、心が安らぐのを感じた。
新たな旅路へ
七日間はあっという間に過ぎ、出発の日がやってきた。相変わらずの寒さの中、荷物を背負い、Evansburg駅の線路脇へ向かった。ここから列車を捕まえて次の目的地、Edmontonへと向かう。線路の傍らに立ち、振り返ると、広大な雪景色の中。

この牧場での体験は、肉体的には大変だったが、自然と向き合いながら生きる実感を味わうことができた。これからの旅はまだ続くが、この白銀の世界で過ごした時間は、私のカナダ冒険の大切な一部となるだろう。

ここでの生活は、時間がゆっくりと流れ、思考がクリアになっていく感覚を与えてくれた。動物との距離の縮め方、極寒の環境での作業の工夫、日常に隠れた小さな美しさの発見。すべてが、旅の中で得た貴重な学びだった。この旅は、私の人生の一部分に過ぎないかもしれない。しかし、この経験は長く心に残り続けるだろう。これから訪れる新たな土地、新たな冒険に胸を躍らせながら、私は列車に乗り込んだ。
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