僕はダメだけど、未来を見つけた
あの日、Facebook のカナダワーホリ向けグループで、ふと目に止まった求人広告。「キッチンスタッフ募集、食事・住居提供、職場は中国語環境」。しかも、ずっと憧れていたロッキー山脈の中で働けるという。ワクワクしないわけがない。これから始まるワーホリ生活は、きっと成長と冒険に満ちたものになるはずだった。
しかし、それはまるで深い穴に落ちるような始まりだった。

夢の地に足を踏み入れる
大きな期待を胸に、僕はカナダへ降り立った。求人広告に書かれていた通り、バンフやレイク・ルイーズまで 1~2 時間の場所で働けるはずだった。仕事の合間に壮大な山々を眺め、英語に自信がなくても大丈夫な環境。そう思っていた。でも、現実はまったく違っていた。
僕が向かったのは「Golden」という小さな町。ブリティッシュコロンビア州の田舎町で、隣のアルバータ州からの公共交通機関は通っていない。頼れるのは、1 日 1 本だけ走るライダー・エクスプレスのバス。ワーホリで車を買うなんて、ほぼ不可能。最初から、この仕事は簡単に辞められないものだった。
甘い約束の裏側
時給 17 カナダドルに加え、チップもある。待遇は悪くなさそうに見えた。さらに、オーナーは「お店の売り上げが伸びれば、ボーナスも支給する」と約束してくれた。
でも、その約束が本当に守られることはなかった。
4 月になると、オーナーは「これからは月給 2300 カナダドルだ」と言い出した。それだけでなく、「売り上げが伸びれば給料も増える」と繰り返した。もちろん、それもただの口約束だった。

終わりのない労働
5 月、観光シーズンがやってきて、レストランは大忙し。昼の 11 時から夜の 10 時まで、ほとんど休憩なしで働く日が続いた。ある晩 8 時半、閉店準備を始めようとしたら、オーナーが「もう一品出せ」と言った。結局、その日も 11 時まで仕事をする羽目になった。

それでも、給料は変わらない。オーナーに「カナダの労働法では、こういう働かせ方は違法だ」と言っても、「明日から来なくていいよ」と笑われた。

さらに驚いたのは、雇われていたのは僕たちだけじゃなかった。違法に働くフィリピン人の清掃員や、観光ビザで働く台湾人シェフもいた。彼らの話を聞いて、僕はここがただのブラック職場ではなく、「社会の影」に近い場所なんだと気づいた。
僕はダメだけど、辞めることにした
7 月、僕はアルバータ大学の試験を受けるために、この町を出る決意をした。試験が終わったら、もう戻らないつもりだった。
辞めることをオーナーに伝えると、「お前なんか、バンクーバーじゃ 3000 ドルの仕事も見つからず、結局台湾に帰ることになるさ」と嘲笑された。でも、その時、僕の中で「もういいや」という気持ちが強くなっていた。
「僕はダメだよ。でも、それが何?」
6 月 30 日、夜 10 時。最後の給料を受け取ると、僕のカナダ・ワーホリの第一章は終わった。
夜中の 2 時、荷物をまとめ、オーナーのビジネスパートナーがピックアップトラックで僕をハスキー・ガソリンスタンドまで送ってくれた。外は静かで、遠くの山々が月明かりにぼんやり浮かんでいた。

ここから先、僕の旅は続く。バンクーバー島から、東のニューファンドランドまで。
今、悩んでいる君へ
あの頃の自分に言いたいことがある。そして、今この文章を読んでいる君にも。
もし今、劣悪な労働環境で苦しんでいるなら、そこを抜け出す勇気を持ってほしい。ブラックな職場、理不尽な扱い、そんなものに自分の未来を縛られる必要はない。
僕はあの時、「もう無理だ」と思った。そして、辞めた。
そうしたら、世界は思っていたより広く、美しいものだった。
カナダに関するその他の記事
Leiowlをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。