仕事を見つけた
真っ白な雪に覆われたハイウェイを、僕を乗せたバスは西へと進んでいた。窓の外を眺めながら、僕の心には一抹の不安が浮かんでいた。エドモントンからカルガリーへ、そしてカルガリーからゴールデンへ。この旅は、都会の喧騒から雪山に囲まれた小さな町へと僕を導く、無言の洗礼のようなものだった。
カナダのワーキングホリデー向けのFacebookグループで、ゴールデンにある中華レストランの求人を偶然見つけた。興味を引かれ、電話をかけてみると、オーナーの声は驚くほど熱心で、温かみがあった。ここでは食事と住まいが無料で提供され、時給は17カナダドル、チップは別途支給される。何より、目の前に広がる景色が素晴らしく、車で1時間ほど行けばバンフ国立公園に着くという。「ここは詐欺なんかじゃないよ」と、電話の向こうの声は何度も強調した。
Go to Golden Town(ゴールデンタウンへ行く)
電話を切った後、僕はGoogleマップでそのレストランを検索し、口コミを確認した。そこに書かれたレビューを読んでみても、特に怪しいところはない。店の前には分厚い雪が積もり、遠くには真っ白な山々が広がっている。まるで映画のワンシーンのような光景だった。この場所なら、行ってみる価値があるかもしれない。そう思い、僕は決意した。
こうして、僕は荷物をまとめ、Rider Expressのバスチケットを予約した。夜の11時、カルガリーに到着したときには、すでにライトレールは運行を終了していた。仕方なく、バスターミナルの隣にあるマクドナルドでUberを呼び、市内のホステルへ向かった。この街にはどこか冷たく、よそよそしい雰囲気があった。僕はただの旅人に過ぎず、一晩だけの短い滞在で、翌朝にはまた旅立たなければならなかった。
朝6時、まだ空は暗いままだった。僕は眠い目をこすりながら起き上がり、郊外のバスターミナルへ向かった。冷たい空気が頬を刺し、言葉を発する気力さえ奪われた。バスの出発は朝8時だったが、太陽はまだ姿を見せない。エンジン音が響き、バスは静かに走り出した。
車窓から見える風景は、次第に輪郭を失い、やがて空と地面の境界さえわからなくなった。ただただ白い世界が広がっている。まるで雪の砂漠を歩いているような感覚だった。時間がゆっくりと流れ、午後2時ごろ、ようやくゴールデンのHuskyガソリンスタンドに到着した。雪は少し落ち着いたが、空気は相変わらず冷たい。僕は荷物を手に取り、店の前で待っていたオーナーと対面した。

到着した
オーナーは僕をレストランへ案内し、その後、用意された部屋へと連れて行ってくれた。シンプルな部屋だったが、少なくとも身を休める場所は確保できた。ここから半年間の生活が始まるのだ。雪山に囲まれた国で、どんな日々が待っているのだろう。
しかし、働き始めると、話は違った。約束された条件とは異なり、残業代は支払われず、労働法も無視されていた。町の交通は極めて不便で、歩いて行ける範囲には限界があった。自分が騙されたのではないか、そんな気持ちが日に日に募っていった。
それでも、この場所には、確かに美しい瞬間があった。朝、扉を開けると、澄んだ空気が一気に流れ込み、目の前には静寂に包まれた雪景色が広がっている。太陽が山々の間から顔を出すと、雪面が黄金色に染まる。その瞬間だけは、全てが報われるような気がした。
ゴールデンの夜は、都会とはまるで違う。車の音も、人のざわめきもなく、聞こえるのは風と雪が落ちる音だけ。夜更けに、僕は熱いお茶を片手に窓辺に座り、遠くの雪山を眺めていた。孤独と自由が、静かに共存する時間だった。
振り返れば、この旅は決して理想通りではなかった。しかし、それでも僕は、この日々を懐かしく思うだろう。雪に閉ざされた世界で過ごした時間は、僕にとって特別なものだった。風の音、雪の匂い、静けさの中に潜む美しさ——それらは、きっと僕の記憶の中でずっと生き続けるのだろう。
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